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例年よりも早い時期からインフルエンザの流行が報告されるシーズンが増えており、「家族や兄弟がインフルエンザにかかってしまったけれど、他のお子様や親への感染を防ぐにはどうすればいい?」「うつらないように薬を飲ませたほうがいいの?」といったご相談を保護者の方からよくいただきます。
お子様たちの生活空間であるご家庭では、完全に隔離することが難しい場面も多くあります。今回は、家庭内でできる実践的な感染予防策と注意点についてご紹介します。
インフルエンザウイルスは、主に咳やくしゃみによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手やドアノブなどを介した「接触感染」によって広がります。そのため、手指衛生やマスク着用などの物理的な感染遮断策の徹底が最も基本かつ重要です。
可能な範囲での生活空間の分離
可能であれば、療養する部屋を分け、寝室も別にします。ただし、小さなお子様の場合は一人にしておくことができないため、看病する大人をできるだけ1人に決めて、他の兄弟や家族との接触時間を減らす工夫が効果的です。
定期的な空気の入れ替え(換気)
密閉された空間ではウイルスの滞留が起きやすくなります。1〜2時間に1回程度、窓を2か所以上開けて部屋全体の空気を入れ替えましょう。
こまめな手洗いと手指消毒
看病の前後、食事の前、トイレの後などは、流水と石けんによる手洗い、またはアルコール手指消毒を徹底してください。
適切なマスクの着用
症状があるお子様(2歳以上で無理なく着用できる場合)や、看病する保護者は不織布マスクを着用しましょう。咳やくしゃみをする際は、ティッシュや服の袖で口元を覆う咳エチケットを心がけます。
よく触れる場所のアルコール清拭
ドアノブ、照明スイッチ、テレビのリモコン、蛇口、トイレのレバーなど、家族が触れる場所をこまめにアルコール消毒液で拭き取ります。
タオルの共用を避ける
手拭きタオルや洗面所のタオルは共用せず、個人専用のタオルにするか、ペーパータオルを活用しましょう。
療養中にお部屋を分けると、「閉じ込められたみたいでかわいそう」「どう過ごさせたらいいの?」と胸を痛める親御さんも多いかと思います。お子様の心を守りつつ、ウイルスを広げないための身近なポイントをまとめました。
当院の診療指針でも大切にしていることですが、お子様に対して「痛くないよ」「すぐ治るから」といった事実と違う言葉をかけると、かえって不安や不信感につながってしまいます。「バイキンをやっつけるために、今はお部屋でゆっくり休もうね」「治ったらまたみんなで遊ぼうね」と、理由や目的を事実ベースで優しく伝えてあげることが、お子様の安心感と協力につながります。
療養する部屋にたくさんの物を持ち込んでしまうと、ウイルスが付着する場所が増えてしまい、掃除や感染対策が難しくなります。
退屈しがちなお部屋の中で、タブレットやテレビなどの画面を見る時間も増えるかと思います。ここで1つ注意していただきたいのが、「画面をアルコールで直接拭かない」ということです。タブレットやテレビなどの液晶画面・機器類は、アルコールで拭き取ると表面のコーティング剥がれや機器破損のリスクがあります。画面部分は専用のクロスなどで拭き、手が直接触れる外側のカバーやリモコンなどをアルコールで拭き取るようにしてください。
「兄弟がインフルエンザになったから、健康な下の子にも予防として薬を出してもらえますか?」というお問い合わせをいただくことがあります。
日本小児科学会の診療指針では、「抗ウイルス薬の予防投与はルーチンで行うべきではない」と明記されています。
予防投与が考慮されるケース
重症化リスクの高い基礎疾患(重い心疾患、呼吸器疾患、免疫不全など)を持つお子様やご家族が濃厚接触した場合、あるいは医療機関・施設等での集団発生など、特定のハイリスク例に限定して慎重に判断されます。
健康なお子様の場合
予防投与による耐性ウイルスの出現リスクや副作用の観点から、誰にでも安易にお薬を処方することは推奨されていません。予防の基本はあくまでも「ワクチン接種」と「日々の感染対策」です。
インフルエンザにかかったお子様を看病する際は、他の家族への感染予防と並行して、ご本人の体調変化をしっかり見守ることが大切です。
発熱から2日間の見守り(異常行動への注意)
抗ウイルス薬の内服の有無にかかわらず、インフルエンザ罹患時には急に走り出したり、意味の通らないことを言ったりするなどの「異常行動」が報告されています。熱が出始めてから少なくとも2日間は、転落などの重大な事故を防ぐため、お子様を一人にしないよう配慮してください。
受診の目安
「水分が全く摂れずぐったりしている」「息苦しそうに肩で呼吸している」「視線が合わない・呼びかけへの反応が鈍い」「けいれんを起こした」などの様子が見られた場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。
近年は流行開始の時期が早まる傾向があり、家族の誰かが罹患した時点で、他のご家族がまだワクチンを打っていないケースもあります。
ワクチンは接種後、十分な免疫がつくまでに約2週間かかります。今回の感染予防にすぐ間に合わない場合でも、シーズン後半や別の型の流行(例:A型流行後のB型など)に備える意味で、体調に問題がなければ後日接種を検討することは有効です。
当院でも「予防に勝る治療はない」という方針のもと、ご家族全体での接種を推奨しています。
家族の誰かがインフルエンザにかかると、看病する親御さんの心身の負担も非常に大きくなります。完璧に隔離しようと無理をしすぎず、「手洗い」「マスク」「こまめな換気」「タオルの分別」といったポイントを押さえた対策を続けていきましょう。
「看病している自分も熱っぽくなってきた」「兄弟の様子がいつもと違っておかしい」など、不安なことがありましたら無理をなさらず、お気軽に当院へご相談ください。